封筒業界の仕事とは?
印刷の基礎知識
ビジネスの場面から大切な人への思いを込めた手紙まで、さまざまなシーンで当たり前のように使用されている封筒。その製造工程には、高品質を担保する機械を扱います。ここでは、封筒製造の工程で使われる印刷機や糊付け機などの機械について、封筒業界未経験者の方にも分かりやすく解説します。
封筒印刷の工程と仕組み
封筒の印刷方法には、大きく分けて2種類あります。一つは、1枚の紙に印刷をしたあと、断裁して封筒の形に加工する方法で、大量生産の封筒を作る際に使われます。もう一つは、出来上がった封筒に後から宛名やQRコードなどを印刷する方法です。これは、個別の宛先に対して情報を発信する場合に使われます。
封筒が作られるまで
封筒には、企業のロゴや所在地だけでなく、内容物が透けないように「裏地紋(うらじもん)という模様を印刷する場合もあります。表面を刷った後に裏面を刷ると時間がかかってしまうため、表面と裏面を一度に印刷できる“反転機”という専用機を採用している工場もあります。
それぞれの封筒工場では、高品質な製品を作るために独自の品質基準を設けています。たとえば、印刷機の中を通る紙を1枚ずつカメラで監視するセンサーの活用や、目視による検品を行い、印刷の汚れやキズ、加工不良をすばやく検知します。
封筒製造に必要な
機械の種類
封筒製造では、印刷から断裁、窓、糊付け、製袋と、工程ごとに専用の機械を使って加工を進めていきます。ここでは、封筒製造に使われる機械の種類を紹介します。
オフセット印刷機

オフセット印刷とは、版についたインクを紙に直接つけず、いったんゴム製のローラーに移してから印刷する方法です。版が直接紙に触れないため、細かい模様やグラデーションもきれいに印刷でき、色の調整もしやすいのが特長です。大量に印刷しても品質が安定しやすく、高品質な仕上がりが求められる印刷に向いています。
また、オフセット印刷機はスピードも速く、納期が迫った注文にも対応しやすいのが強みです。インクの種類も豊富なので、オーダーに合わせて色味を細かく調整でき、満足度の高い封筒づくりにつながります。
断裁機

印刷された紙を、封筒の形にあわせて断裁・抜き加工するのが「断裁機」です。抜き加工には「エキセン抜き」「ビク抜き」などの種類があり、封筒の形状や製造枚数によって選択されます。
一度に300~500枚の加工がでる「エキセン抜き」は、エキセンと呼ばれる刃を指定の寸法にセットして用紙を一度に抜き加工する方法です。
一方「ビク抜き」は、木製板に入れた切れ込みに沿って刃を立てた抜型(ビク型)を使って抜く方法です。複数窓や変形窓、ミシンなど、複雑な形でも綺麗に加工することができます。
糊付け機
糊付け機は、封筒の口の部分に糊やテープを塗布する機械です。口糊の種類にはアラビア(水糊)、ホットメルト、両面テープ、アドヘアなどがあり、それぞれの専用機で加工を行います。
糊の量や塗布部位が適切かどうか知るため、「マイクロメータ」という測定器を使って確認します。マイクロメータは、紙や糊の厚さを0.01ミリ単位で測れる精密な道具で、測りたいものをはさんで厚みをチェックする仕組みです。
また、しっかり糊がついているか確かめるには、封筒を破って中の状態を調べる「破壊検査」を行います。こうした検査を通して、封筒の品質がしっかり保たれているかを確かめています。
封筒印刷トラブルを
防ぐためのポイント
封筒印刷のトラブルを防ぐには、清掃とメンテナンスが欠かせません。特に、複合機の場合は1ヵ所でトラブルがあると全工程が止まってしまうため、細かな異常にも気付くことのできる目が必要となります。
一般的な封筒工場では、機械の稼働始めと終わりに清掃・メンテナンスを行います。また、月に一度は封筒づくりを休止して、丸1日をかけて清掃とメンテナンスを行っている会社もあります。こうした機械のメンテナンスを定期的に行うことで、日々に起こりうるトラブルを小さくし、工程への影響を最小限にとどめているのです。
封筒製造工程の専門用語集
封筒業界の製造工程ではさまざまな業界用語や、その企業独自の名称があります。ここではそんな封筒製造工程で使われる専門用語をご紹介します。
パラパラ検査(パラ検)

パラパラ検査とは、束ねた封筒を手に持ち、上から下へページをめくるように一枚ずつずらしながら、汚れや破れなどがないかを目視でチェックする検品方法です。
一瞬の間に汚れや破れ、口糊、窓などの状態などを目視でチェックするため、手早く“パラ検”ができるようになるまでは熟練の手業を要します。
載せ手
載せ手(のせて)とは、前工程から上がってきた半製品を、次の工程の機械に載せる係のことです。前工程の加工が問題なくできているかをパラパラ検査でチェックし、次工程に送る役割です。
受け手
受け手(うけて)とは、最終工程の機械から仕上がってきた封筒を受け取り、パラパラ検査をして梱包する係です。出荷前の最終チェックを担当する重要な役割です。
未経験者が知っておきたい
封筒製造の基礎知識
環境にも配慮したこだわりの
工場
近年、SDGsへの関心が高まるなか、紙製品を扱う企業にも環境への配慮が求められるようになってきました。封筒製造を担う企業では、再生紙の活用や、FSC(森林管理協議会)の国際認証を受けた紙の使用、サプライチェーン全体の信頼性を証明するCOC認証の取得など、環境負荷の低いものづくりを心掛けています。
意外と少ない「一貫製造」
体制
紙でできた封筒は一見シンプルながら、印刷・抜き加工・窓の貼り付け・口糊の加工・製袋など、複数の工程を経てつくられています。こうした封筒製造に特化した一連の工程を一つの工場で行える企業は、実はそれほど多くありません。
多くの企業では、複数の工場に分けて作業を行うため、そのあいだの運搬に時間がかかり、納期も長くなる傾向があります。一方で、すべての工程を自社内で完結できる工場では、工程ごとの連携がスムーズで、短納期での納品が可能になるのです。
